今回は家電銘柄大手のビックカメラ<3048>についてご紹介します。
現在、家電量販店業界の株価が軟調で、どの銘柄もパッとしません。言い換えると、手が出しやすい価格になってきていますので、安く仕込めるチャンスが来ているかもしれません。
そんな中、家電量販店のビックカメラは地合の影響もあってか軟調な株価を示しています。現在の株価は前回の下値ラインを割ってしまっている状況ですが、コロナショック時の大底875円(2020.3)を見ると、さすがにこれ以降の下げはそこまで大きくないと踏んでいます。
2021.12.20での年間チャートです。4月頃を高値にダラダラ下落が続いています。
一定の下げがある時は出来高も伴っているように見えますので、横もしくは上方向はまだ先のように見えますね。
店舗が遠く使いにくいので保有していません。
ただ、さすがに10万円を切ってくるレベルになると話は変わります。かなり値頃感がでてきますし、総合利回り(配当+優待の合算金額)が高く、これから優待投資を始めたい方はチェックしておいても良い銘柄の1つではないでしょうか。
ただ、利回りや優待の内容が良いからという理由だけで安易に飛びつくのは危険です。
買ったのに全然下げ止まらない!
優待が改悪された!
こうした失敗をしないためには、銘柄を選ぶ際に利回りの高さだけに目を奪われてはいけません。
基本的に長期間に渡って高配当を維持している企業というのは「今後の成長が見込めない会社だが安定的な経営が出来ている」いわゆるおじいちゃん企業です。成長性が無いため、会社として新たな投資はしない代わりに利益を株主に還元する方針の企業が高配当となる所以です。
中には経営がガタガタで株価が暴落した結果、高配当となっている場合もありますし、年間の利益以上に配当として還元している企業でいつ減配されてもおかしくない場合など、いわゆる「罠銘柄」なんていうのも高配当の世界には多数存在します。
そんな罠銘柄に引っかからないためにも企業分析は必須です。
特にコロナ・ショックの影響により、業績の悪化を予想して株価の下落に見舞われている大企業も少なくありません。その一方で増収・増益で上方修正している企業もあります。高配当だからといって安易に飛びつかず、必ず業績の健全性や現在の株価が本当に割安なのか調べてから、買う、買わないを決めるようにしたいですね。
時間の無い人に、記事の要約です。
↑ これだけで今回の記事の内容はOK!
お時間のある方は続きもご覧いただければ幸いです。
ビックカメラ<3048>の事業概要
株式会社ビックカメラは、家電量販店を経営する日本の企業。 群馬県高崎市で創業、東京都豊島区の池袋駅東口に本店を置き、2021年3月時点では17都道府県に直営48店舗、日本空港ビルデング、ビックカメラの出資により設立されたAir BIC株式会社が運営する、Air BIC CAMERA7店舗を展開。 ヤマダデンキに次いで業界第2位。子会社にソフマップ、コジマなどがある。
Wikipediaより引用
業種分類(※1) | 小売業 |
連結事業(※1) | 音響映像商品15、家庭電化商品34、情報通信機器商品32、他19(2021.8) |
シェア(※2) | 13.1%(業界2位) |
※1)Yahoo!ファイナンスより引用。
※2)家電量販店業界シェア&ランキング(2021年版)より引用。
ビックカメラの配当&優待内容
株主優待制度
長期優待として8月末の優待に保有年数に応じて優待券が追加されます。
配当金
2022年の配当金は同社が公表している15円(2021年8月期 決算説明会「プレゼンテーション資料」より)です。
直近5年間の配当実績
利益分配に関する基本方針
当社は、株主の皆様への利益還元を最も重要な経営課題の一つと考えており、業績に応じた適切な利益配当の実施をその基本方針としております。
ビックカメラ「株主還元」より引用
2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
12円 | 12円 | 20円 | 20円 | 13円 | 15円 |
総合利回り
100株保有した場合の現在の利回りを計算してみました。
- 株価:952(2021.12.21終値)
- 配当:15円(予想)
- 優待:100株3,000円、1年長期4,000円、2年長期5,000円
1年未満 | 4.7% |
1年以上 | 5.7% |
2年以上 | 6.8% |
長期保有の優待パワーが凄い!
ビックカメラは優待で持っているようなものです。
ヤマダHDの優待改悪(ZAi ONLINEより)も記憶に新しいですが、なにかと改悪されやすい優待ですので優待利回りの高い同社は一定のリスクがあることを覚えておく必要があります。
都は言っても最終的な長期利回りは7.8%。見過ごすわけにはいきません。さらに深掘りして企業分析をすることで、投資価値のある企業か考えてみました。
株価指標の推移
現在の株価が割高or割安なのかを見る指標に「ROE(自己資本利益率)」「ROA(純資産利益率)」があります。
その推移を過去13年分集めてみました。
13年平均のミックス係数が25.5、直近3年間の平均が17.7でした。
- ミックス係数とは
- 当期純利益と純資産から現時点の株価の割安性を評価する指標です。
PER(株価収益率)×PBR(株価純資産倍率)
ベンジャミン・グレアム氏は、ミックス係数が22.5よりも小さな銘柄が割安株だと述べています。ただし、この22.5という数値は米国株に当てはめた時の数値ということで、日本株の場合にはこの更に半分の11.25が妥当という見方もあります。
Kabutanより引用
企業情報を調べてみた!
株主優待や配当が高くて魅力的に映りますが、企業が安定して株主還元するには安定した収益が必須です。
ここではビックカメラがこれからも株主還元し続けられるのか考察するために情報を精査していきます
売上高は8000~8500億程度を推移しています。最も業績の良かった2019年から緩やかな減少を示しており、2022年も減収予想です。
営業利益も減少予測です。
ビックカメラの営業利益率は2%程度しかなく、大手家電量販店銘柄の中でも苦戦している部分ではないでしょうか。
【営業利益率比較 一覧表】
参考までに、各企業の利益率をまとめてあります。
2021 | 2022(予) | |
ケーズHD | 6.50 | 5.80 |
ヤマダHD | 5.25 | 5.34 |
エディオン | 3.49 | 2.64 |
ビックカメラ(※1) | 2.18 | 1.95 |
コジマ | 2.98 | 1.84 |
既存店売上推移
直近2年間の既存店売り上げの推移をグラフにしてあります。
年間の業績推移は新規出店して販売地域を広げれば数字は上がります。
年間の業績推移だけを追っていくと、企業の成長性や利益のピークが分かりにくいので月次売上を追って行く必要があります。
そこで私が重要視しているのが「既存店売上」です。
同社の月次報告では直近24ヶ月で前年同月比で100%以上の月が4回しかありません。
売上高の推移と合わせて短期・長期でマイナス成長であることは間違いなさそうです。
自己資本比率
ビックカメラの自己資本比率の推移です。
自己資本比率は一般的に40%を下回ると高いリスク群と判断されます。
業種別では「小売業」の目安が36.7%(doda「自己資本比率とは?業種別で何%くらいが目安なの?」参照)に比べて同社の自己資本比率は低い水準で推移していることが分かります。
同社はここ10年ほど30%前後を推移していますが、もう1歩欲しいところです。
ただ、ほぼ横ばいの数字を見る限りでは短期的な倒産リスクは低いと判断しても良さそうです。
- 自己資本比率
- 自己資本比率は会社経営の安定性(倒産リスク)を示す数値です。
自己資本比率とは、返済不要の自己資本が全体の資本調達の何%を占めるかを示す数値で、自己資本比率が高いほど経営は安定し倒産しにくい会社となります。
注意点としては、%の水準だけでなく長期的な推移の変化も注意する必要があります。安定して横ばいであればリスクは限定的とも判断できます。
配当性向
配当性向は今後の減配リスクを予測する上でも重要な指標です。
ビックカメラの基本方針は”業績に応じた適切な利益配当の実施”とし、数字での明示は行っていません。
配当金は同社公表の基本方針通り、フレキシブル(?)に増減配されています。
2021年の配当性向は16%です。上のグラフを見る限りでは、20%前後の水準を目標に出しているように見えます。
トータルで見れば、まだまだ還元には余力がありますので、大きく減配という懸念は無いように思えます。
純資産配当性向(DOE)
2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
2.4% | 2.3% | 2.2% | 1.9% | 2.1% | 1.9% | 2.9% | 2.7% | 1.7% | 1.9% |
過去10年のDOEを調べてみると、だいたい2~3%弱の推移となっています。
他社と比較すると若干高めに見えますが、直近2年は2%以下とまずまずの数字です。
↓ ちなみに同業他社の水準はこちら
ヤマダHD | 1.5~2.0% |
エディオン | 2.0%前後 |
ケーズHD | 2.0~3.0%弱 |
- DOEとは
- 英語表記「Dividend on equity ratio」の略で「株主資本配当率」のこと。企業が株主資本に対してどの程度の配当を支払っているかを示す指標です。配当水準を示す指標としては、当期純利益に対する配当額を表す配当性向が一般的ですが、当期純利益は変動幅が大きいため、株主還元の状況を示す指標として近年では株主資本を基準にしたDOEを採用する企業が増えています。
株主資本配当率(DOE)=年間配当総額÷株主資本×100 (%)
または、
株主資本配当率(DOE)=配当性向×自己資本利益率(ROE)×100 (%)
「三井住友DSアセットマネジメント(わかりやすい用語解説:DOE)」より引用
ビックカメラの成長戦略
ビックカメラが今後も株主に還元し続けてくれるためには、企業としての中長期の成長が必要です。
そこで同社が今後どのような事業を拡大させていくつもりなのか、どんなビジョンを見据えているのか調べてみました。
店舗展開による収益の拡大
店舗を増やすことは収益の拡大に直結します。
同社も複数の新規店舗出店により販路拡大を図ると発表しています。
PB商品
個人的に家電量販店業界の企業が今後収益を伸ばすにはPB(プライベート・ブランド)商品の開発如何によると考えています。
現在の売上高PB比率は11.4%(21/8期)で年平均成長率は+33%(直近3年の販売額)となっています。
PB商品の粗利益率は35~40%とも言われていますから、粗利の少ない家電では今後生き残っていくためにはPB商品の開発と販売促進が重要です。
今後注視しておく数字です。
その他
ここらへんは省略します。
●サポート・修理
●買い取り・リユース販売
●ラストワンマイル
●サブスクリプション
●販売力強化(店舗、EC、法人事業)
ビックカメラまとめ
ビックカメラは年初来安値付近で推移しており値頃感が出ている銘柄です。ただ、今後の家電量販店業界を巡る環境は競争激化が続いているのと需要減少が予測されている業界でもあります。
同社の来期予想も下目線です。
利回りだけ見ると、かなりの高配当であることは間違いありませんが、今後のマイナス成長を既に見込んでいる価格だと思います。
そのため収益の減少に伴う減配やヤマダHDのような長期優待の改悪も想定しなければいけません。
その他の数字も不安要素のあるものでしたので、値頃感と利回りの高さで飛びつくにはいかない銘柄と判断しました。
正直、同じ家電量販店銘柄でも利回り、リスクが低い銘柄が他にもあります。
今回はビックカメラについて書かせて頂きましたが、他の銘柄に関してもご紹介しています。
よろしければ、そちらも合わせてご覧いただければ幸いです。