今回は家電銘柄大手のケーズHDについてご紹介します。
現在、家電量販店業界の株価が軟調で、どの銘柄もパッとしません。言い換えると、手が出しやすい価格になってきていますので、安く仕込めるチャンスが来ているかもしれません。
そんな中、家電量販店のケーズHDは地合の影響もあってか軟調な株価を示しています。現在の株価は前回の下値ラインを割ってしまっている状況ですが、コロナショック時の大底920円(2020.3.9)を見ると、これ以降の下げはそこまで大きくないと踏んでいます。
2021.12.15時点での6ヶ月チャートです。8/20の場中の安値1,102円を割り込んで年初来安値を更新しています。
我が家の近くに無いので保有はしていません。
ことケーズHDに至っては10万円程度で買える値頃感の割に、総合利回り(配当+優待の合算金額)が高く、これから優待投資を始めたい方はチェックしておいても良い銘柄だと思います。
ただ、利回りや優待の内容が良いからという理由だけで安易に飛びつくのは危険です。
株価が下げ止まらなくて含み損!
優待廃止された!
こうした失敗をしないためには、銘柄を選ぶ際に利回りの高さだけに目を奪われてはいけません。
基本的に長期間に渡って高配当を維持している企業というのは「今後の成長が見込めない会社だが安定的な経営が出来ている」いわゆるおじいちゃん企業です。成長性が無いため、会社として新たな投資はしない代わりに利益を株主に還元する方針の企業が高配当となる所以です。
中には経営がガタガタで株価が暴落した結果、高配当となっている場合もありますし、年間の利益以上に配当として還元している企業でいつ減配されてもおかしくない場合など、いわゆる「罠銘柄」なんていうのも高配当の世界には多数存在します。
そんな罠銘柄に引っかからないためにも企業分析は必須です。
特にコロナ・ショックの影響により、業績の悪化を予想して株価の下落に見舞われている大企業も少なくありません。その一方で増収・増益で上方修正している企業もあります。高配当だからといって安易に飛びつかず、必ず業績の健全性を調べてから、買う、買わないを決めるようにしたいですね。
時間の無い人に、記事の要約です!
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ケーズHD<8282>の事業概要
茨城県に本社を置く家電量販店チェーンを展開する企業。ケーズHDの特徴ちして家電とパソコン、携帯電話などに品揃えを絞っている。競合他社では家電製品やパソコンに限らず、おもちゃやテレビゲーム、食料品や医薬品、家具といった商品を扱い多角化している例が多い中で、品揃えを絞っている理由として電気に徹する考えとコストの問題を挙げている。
Wikipediaより引用、一部改変
業種分類(※1) | 小売業 |
連結事業(※1) | 音響商品2、映像商品13、情報機器24、家庭電化商品38、季節商品17、他6(2021.3) |
シェア(※2) | 12.3%(業界3位) |
店舗数 | 519店舗(直営515/FC4) |
子会社 | 株式会社デンコードー 株式会社ギガス 株式会社関西ケーズデンキ 株式会社ビッグ・エス 株式会社北越ケーズ 株式会社九州ケーズデンキ 株式会社ケーズキャリアスタッフ 株式会社テクニカルアーツ |
※1)Yahoo!ファイナンスより引用しています。
※2)家電量販店業界シェア&ランキング(2021年版)より引用しています。
ケーズHDの配当&優待内容
株主優待制度
ケーズHDの株主優待は同社で利用可能な「優待券」が頂けます。
同社の株主優待は、100株保有で3月・9月に1,000円ずつ、年間2,000円の優待券が頂けます。
さらに、1年以上の保有で2倍になる長期保有特典制度が採用されています。(2021.3の株主名簿を更新適用開始1回目)
配当金
2022/3月の配当予想は40円です。
直近5年間の配当実績
同社は連結配当性向30%目標にしています。(株式会社ケーズホールディングス「個人投資家説明会」)資料より引用
2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
20円 | 27.5円 | 31.5円 | 30円 | 30円 | 40円 |
株式分割:は2016.6.1と2018.4.1に普通株式1:2で実施しています。(株式会社ケーズホールディングス「株式情報」)より引用」
総合利回り
100株保有した場合の現在の利回りを計算してみました。
- 株価:1,099円(2021.12.16終値)
- 配当:40円(2022年予想)
- 優待:100株 2,000円(長期4,000円)
100株保有時の総合利回りは5.45%!
1年間の長期保有で総合利回り7.2%
配当と優待のバランスが良いですね!
なにかと改悪されやすい優待ですが、配当と優待(長期)の割合が50:50になっていますので、仮に優待廃止となってもダメージが限定的との見方もできそうです。
高利回りかつ配当と優待のバランスのとれた銘柄です。
しかし、ここで焦って飛びつくのは危険です。罠銘柄の可能性もありますので、一度冷静になって企業分析をしていきましょう。
株価指標の推移
現在の株価が割高or割安なのかを見る指標に「ROE(自己資本利益率)」「ROA(純資産利益率)」があります。
その推移を過去13年分集めてみました。
13年平均のミックス係数が6.9、直近10年間の平均が5.7でした。
2022年予想のミックス係数が7.6%と直近10年の推移では若干割高感のある数字です。
- ミックス係数とは
- 当期純利益と純資産から現時点の株価の割安性を評価する指標です。
PER(株価収益率)×PBR(株価純資産倍率)
ベンジャミン・グレアム氏は、ミックス係数が22.5よりも小さな銘柄が割安株だと述べています。ただし、この22.5という数値は米国株に当てはめた時の数値ということで、日本株の場合にはこの更に半分の11.25が妥当という見方もあります。
Kabutanより引用
企業情報を調べてみた!
株主優待や配当が高くて魅力的に映りますが、企業が安定して株主還元するには安定した収益が必須です。
ここではケーズHDがこれからも株主還元し続けられるのか考察するために情報を精査していきます。
ケーズHDは直近の数年間は売上高・営業利益を徐々にのばしています。
特に注目して欲しいのが「営業利益率」です。
同社の営業利益率は2021年に6.5%となっています。来期予想では5.8%と減少する見込みですが、家電量販店業界の中では高い数字を示しています。
参考までに、主要な家電量販店業界の各企業の数字をまとめておきます。
【営業利益率 比較】 | 2021 | 2022(予) |
ケーズHD | 6.5 | 5.8 |
ヤマダHD | 5.25 | 5.34 |
エディオン | 3.49 | 2.64 |
ビックカメラ(※1) | 2.18 | 1.95 |
コジマ | 2.98 | 1.84 |
家電量販店業界は他の業界と比較しても利益率が低く、
この表を見ると、ケーズHDの利益率の高さが際立ちます。
当社のビジョン
連結配当性向 30%目標
・着実に増収増益を図り、安定配当を目指す
機動的な資本政策を遂行
・資本効率の向上、経営環境の変化に対応する
・ROE10%を目指す
「株式会社ケーズホールディングス 個人投資家説明会資料」より引用
2021年は政府の一時金支給により業績は過去最高を記録した一方、2022年度は減収・減益予想となっています。
2021.11.4に発表された決算短信での業績下落の理由を載せておきます。
新型コロナウイルス感染症拡大防止対策の徹底を継続し、折込チラシの自粛や一部店舗での営業時間短縮を継続してまいりました。また、第1四半期におきましては、緊急事態宣言下での休業要請を受け、最長で4月25日から5月13日までの期間、大阪府、兵庫県、京都府に立地する全39店舗を臨時休業いたしました。
業績につきましては、天候不順によりエアコン等の季節商品や冷蔵庫をはじめとする家庭電化商品が振るわず、昨年5月の特別定額給付金の支給や6月及び8月の猛暑で非常に好調であった前年同期を下回る結果となりました。
ケーズHD 2022年3月期 第2四半期決算短信より
2021年の好決算は一時的な理由であることは明白で、今後同社の成長性は鈍化すると予想していますが、先ほどの数字を見る限り、堅調な業績を維持してくれそうです。
自己資本比率
ケーズHDの自己資本比率の推移をまとめました。
- 自己資本比率
- 自己資本比率は会社経営の安定性(倒産リスク)を示す数値です。
自己資本比率とは、返済不要の自己資本が全体の資本調達の何%を占めるかを示す数値で、自己資本比率が高いほど経営は安定し倒産しにくい会社となります。
自己資本比率は一般的に40%を下回ると高いリスク群と判断されます。
業種別では「小売業」の目安が36.7%(doda「自己資本比率とは?業種別で何%くらいが目安なの?」参照)に比べて同社の自己資本比率は高い水準で推移していることが分かります。
直近10年超の期間では徐々に水準を上げてきています。特にここ3年は60%オーバーと安心感のある水準です。
配当性向
ケーズHDは連結配当性向30%を目標にすると明示しています。
配当性向は今後の減配リスクを予測する上でも重要な指標です。
明示してある配当性向は30%ですが、絶好調だった2021年度を抜いて過去5年平均(2016-2020)で見ると26.8%となります。
30%を超えて還元している年は2020年の1年間だけです。
それを踏まえて見ると、2022年度の水準でBPSが推移するならもう少しだけ増配の余地はありそうですが、言い換えると目標ギリギリとなっていますので、今後業績が低迷すれば減配リスクもありそうです。
● 純資産配当性向(DOE)
2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 |
2.1% | 2.3% | 2.1% | 2.3% | 2.9% | 3.1% | 2.8% | 2.6% | 3.2% |
大体2%~3%台を推移しています。DOEに関して他社(ヤマダHD1.5~2%、エディオン2%台)と多少高くなっています。
- DOEとは
- 英語表記「Dividend on equity ratio」の略で「株主資本配当率」のこと。企業が株主資本に対してどの程度の配当を支払っているかを示す指標です。配当水準を示す指標としては、当期純利益に対する配当額を表す配当性向が一般的ですが、当期純利益は変動幅が大きいため、株主還元の状況を示す指標として近年では株主資本を基準にしたDOEを採用する企業が増えています。
株主資本配当率(DOE)=年間配当総額÷株主資本×100 (%)
または、
株主資本配当率(DOE)=配当性向×自己資本利益率(ROE)×100 (%)
「三井住友DSアセットマネジメント(わかりやすい用語解説:DOE)」より引用
ケーズHDの成長戦略
ケーズHDが今後も株主に還元し続けてくれるためには、企業としての中長期の成長が必要です。
そこで同社が今後どのような事業を拡大させていくつもりなのか、どんなビジョンを見据えているのか調べてみました。
ケーズHDの経営方針は「がんばらない経営」です。
無理をして自分の力以上のものを出すことは、継続していく会社経営には不向き。顧客に対して正しいことを無理せず向き合い、実行していくというものです。
その経営方針のためか、競合他社が多面的に事業拡大をする中で、現在の家電販売中心の経営方針を継続していくようです。
ケーズHDまとめ
ケーズHDは年初来安値で値頃感が出ている銘柄です。今後の家電量販店を巡る環境は外部からの参入もあり競争激化と需要減少が予想されます。(あくまで私の個人的な意見)
同社は家電販売中心の経営方針を今後も続ける意向を示しています。そのため、収益の悪化も想定しておいたほうがよさそうです。
また、配当性向30%を掲げており現時点でも25%程度還元しているところを考えると今後の増配余地は限定的であり、増配余力だけでなく、減配リスクも少なくないと考えています。
そのため、現時点で買い向かう判断は出来ません。ただ、現時点では高利回りの魅力的な銘柄であることは間違いありませんので、今後も株価が安くなるようなら再度検討してもいいかと思い、チェックリスト候補としました。
他の家電銘柄も見ておこう!
今回はケーズHDについて書かせて頂きましたが、他の家電量販店銘柄についても記事を作成しています。
よろしければ、そちらも合わせてご覧いただければ幸いです。