近年、自己肯定感の低い大人が増えています。
自分に自信が持てない、常にネガティブ思考、自分の考えが持てない…
これらの傾向が強い人には共通点があります。
それは、子どもの頃から問題現象があり正しく矯正(保育・育児)されなかった経験です。
子どもの頃の問題因子が矯正されずに成長した結果、大人になって自己肯定感を身につけることが出来なかったということです。
言い換えると、子どもの頃の問題因子を上手に取り除けば、将来自己肯定感のある人になれるということです。
自己肯定感の無い大人の特徴
他人と比較して劣等感が強い
仕事や勉強で成果を出すには、「他人と比較して競い合う」ことが大切です。
通常、人は競争によって自分の能力を伸ばし高めます。
一方で、自己肯定感が低い場合は他の人との比較した上で劣等感を持ち自己否定してしまいます。
他人と比較してネガティブになるクセを持っているのが特徴です。
自分に対しても劣等感が強い
何事に対しても「できない」と否定してしまう傾向があります。
自分を肯定できないので、実力を過度に低く見積もってしまいます。
また「できない」という考え方に支配されて、何事に対しても消極的。
仮に何かをやってもすぐに諦めてしむう傾向が強くなってしまいます。
周囲への依存度が高い
自分では何も決められず、実行することもできません。
すると、次第に周りの人への依存度が高まります。
相手の考え方に同調し過ぎてしまい、人に決めて貰ったことしかしなくなる傾向が強くなります。
仮に何か失敗したとしても「自分が決めたことじゃないから、自分は悪くない」
他人に責任を押し付けて自分は逃げる。
本人にとって知らず知らずのうちに、こんな考え方が定着してしまいます。
結局、自分では決めきれずに何かを決断しなければならない場面で問題を先延ばしにする人になります。
子どもの問題現象がキッカケになる
赤ちゃんを取り巻く環境は、生まれた環境に大きく依存します。
親族が多かったり、近所つきあいが密で常に周りの大人達とコミュニケーションが取れる環境に居た子。
一方で核家族、もしくはひとり親の環境で他者との関係性が薄いままの子。
兄弟がたくさん居るのか、一人っ子なのか。
もちろん、多様化する価値観の現代では一概に「これが良い」ということはありませんが、基礎力が身につくであろう発展途上の時期を考えると、家庭環境や地域環境に大きく依存することは避けられません。
その中で、他の子と交わることで問題点が顕在化します。
本来であれば、他のお友達との集団的な交わりによって、様々な葛藤の克服によって得られる達成感や自分の「よさ」を実感し、それによって自己肯定感が育まれます。
しかし、現状では葛藤を克服するために能力が足りず、結果的に自己肯定感が養われることが無いという問題に直面しています。
そんな傾向にある子どもにはいくつかの問題現象があります。
つまり、子どもの問題現象とは、周りの大人たちへのサインです。
大人たちは積極的に子ども達を観察して問題現象を見つけて早期に対処することが求められます。
言葉の問題現象
言葉で意思表示することが少ない
3歳の言語能力の目安
・名前・年齢・簡単な質問に答える。
・名前を呼ばれて返事ができる。
・相手の目を見て話す事、聞く事ができる。
・日常の挨拶(おはよう、こんにちは、ありがとう、おやすみなさい・・)
・具体物を触り、言葉で表現をする。(硬い、柔らかい、フカフカ、ザラザラなど)
幼児才能開花教育まいとプロジェクト~幼児脳を鍛えて「できる子」に~,3歳の発達 目標と目安より
言葉での意思表示が少ない場合、言えてもオウム返しや単語もしくは2語文のみの傾向があります。
ほかの子と比較しても語彙(言葉の数)が少なく、語彙力の無さをジェスチャーでカバーしようとする姿勢が見受けられます。
発音が不明瞭
発する言葉がはっきりしておらず、子どもによっては自分の名前もきちんと発音出来ないなどが見られます。
例を挙げると、「サ行」の発音が「タ行」になる傾向があります。
具体的には、
- 「あし(足)」⇒「あち」
- 「せなか(背中)」⇒「てなか」など・・
会話のやりとりが成立しない
親やその他の近い大人からの言葉かけは理解できる一方で、自分の意思を上手に言葉にできないことや、オウム返しをしたり、ちぐはぐな回答をするなどが見られます。
そのため、仕草から読み取ることが多いことに気付きます。
また、お友達との会話でもオウム返しが多いなどの結果、相手に自分の意思が伝わらないことが原因で怒りを爆発させて噛みついたり叩いてしまうなどの問題行動が見られます。
情緒面の問題現象
些細なことですぐ泣いたり、一度機嫌を損ねると長引いたり、注意散漫という場面が見られます。
初めて幼稚園や保育園に通う際に、ママと離れたくないと泣く子は珍しくありませんが、0歳から通園しているのにも関わらず、いつまでも泣いている場合は問題です。
そんな子に限って、ただ単に泣くのではなくところ構わずひっくり返って暴れる子や泣きながら走り回って壁などに頭をぶつけて大泣きするという危険な子もいます。
これらの子どもに共通するのが、「感情面の立ち直りに時間を要する点」です。
少し注意されただけで半日は立ち直れない、着替えなどのちょっとしたことが上手にできなかっただけで烈火のごとく泣き叫ぶこともあります。
対人関係の問題現象
一番の問題となるのが「対人関係」です。
他のお友達と交わる場面において、最初は能力が低かったとしても次第に改善される場合もありますが、その一方でより顕在化したり固定化が進む場合があります。
この問題現象がある場合は、自由にお友達を遊ぶ場面、集団的活動、子ども同士が衝突する場面で問題が生じてきやすくなります。
特に、他の子と仲良く出来ない場面が見受けられることが多いです。
自由遊び場面
自由に遊ぶ場面では、主に1人で遊ぶことが多く、他のお友だちとの交流が少ない。
さらに他のお友だちが近づくと、怖がって逃げてしまう行動が見られます。
集団でまとまって活動する場面
「集団活動に無関心タイプ」と「みんなと活動したいけど衝突するタイプ」の2パターンが見られます。
無関心タイプでは、基本的に集団行動を促されても無視するタイプ。
時おり自分の気が向いたときはお友だちの中に入っていくこともありますが、基本的には色んな場所を徘徊する行動が見られます。
衝突タイプは参加したい気持ちはあるのに、すぐに他のお友だちと衝突してはみ出してしまいます。
基本的には自分本意の行為を優先するあまり、喧嘩になることが多いです。
オモチャを取り合うなどですぐ衝突してしまい、酷いと相手を引っ掻いたり、噛みついたりと問題行動を起こします。
周りの大人がとるべき対応とは
子どもを見守る視点を見直す
問題行動のある子の今を尊重する視点をもつ
子どもの自己肯定感を育むためには、「ありのままの自分を受け入れてもらえるか」が大切なポイントになってきます。
問題現象を起こす子どもをひとまとめに問題児として見るのは危険です。
大人が子どもたちを自然と評価している反面で、子どもたちも周りの大人をよく観察しています。
問題児として周りの大人たちから評価された子どもは、周りの大人たちの意向や期待に応えようとして自らの内面を束縛するようになります。
このサイクルによって、自己肯定感が正しく育まれなくなってしまいます。
自己肯定感を正しく養わせるには、「問題現象のある子どもを問題児とひとまとめに評価しないこと」が大切です。
周りの大人は、その子の今を尊重する姿勢をもって見守ってあげてください。
今の自分をありのまま受け入れて貰える安心感があってはじめて子どもたちは充実した生活を送ることができるようになります。
その子の発達過程を重視する視点をもつ
子どもの発達は教科書通りにはいきません。
そして、周りの他のお友だちと比べて一喜一憂することも、子どもの発達を阻害します。
一般的には、各発達領域ごとの到達点というものが存在しますが、それに当てはめて子どもを評価すると「できないこと」に目が向きがちで短絡的に評価する傾向にあります。
つまり、減点方式ではなく、加点方式で子どもを見守る視点が大切です。
たとえば、先に述べた3歳の段階での言語能力というものがありました。
この基準のレベルに対して「できた・できない」と評価するのではなく、
「その言葉を使って何を感じとり、何を認識し、誰と仲良くなっていくか」のプロセスを重視して理解してあげる視点を大事にする方がよっぽど自己肯定感を養わせることに繋がります。
お友達との関わりを増やす
ただ単純に他のお友だちとの接触機会を増やすだけではダメです。
色んな子どもが参加できて、面白くて、夢中になれる遊びを積極的にやらせる場を作ってあげる必要があります。
楽しい遊びであれば、お友だち同士の距離が短くなり、自分を出し合うことができるようになりますし、衝突する場面においても仲直りがスムーズにできるようになります。
その結果として、
- 相手の話を聞く力
- 自分の意思を言葉にする力
- 遊びを工夫する力
- 身体操作力・運動能力
これらの能力も総合的に育むことができます。
さらに、お友だちと積極的に関われることは集団への帰属意識も養われますし、自分が受け入れられたという経験によって情緒の安定にも繋がります。
他との関わりに無関心の子へのの対応
他のお友だちへの関心が薄い子は、1人遊びばかりだったり、自分の思い通りになるお友だちとしか遊ばない傾向にあります。
そこには、「自分さえ良ければ良い」という考えが根底にあります。
そんな子が仲間遊びに参加したとしても、関係の深まりや集団活動の高まりは期待できません。
対策としては、周りの大人が意図的に介入・指導することです。
そこでおすすめな方法が、
「グループで協力し合わなければならない状況におかれることで、合意の形成を成立しやすい状況にし、1つのことをみんなでやり遂げさせる」ことです。
1つ例を挙げると、「生き物の飼育を役割分担をして世話をさせる」ことが良いでしょう。
自分の役割を自覚して、それぞれが共通の目標に向かって力を併せて取り組むことで、自己肯定感を引き出すことができます。
自己肯定感を育てる育児方法まとめ
- 自己肯定感の低い人は小さい頃から問題現象があった。
- 問題現象は主に「言葉」「情緒面」「対人関係」
- 言葉の問題現象には言葉による意思疏通の困難・発音が聞き取りにくい・会話が成立しない
- 情緒面の問題現象は泣きやすい・立ち直りに時間がかかる・集中力がない
- 対人関係の問題現象は仲間と交われない・他の子とよく衝突する・大人を無視する
- 解決するには、問題現象のある子を肯定的に見る大人の存在が必要不可欠
社会に出てから、多くの人と接する機会が多くなります。
そのなかで、自己肯定感の低い大人をよく見かけます。
その方たちの背景には、幼少期の問題現象を周りの大人に修正されなかった経験が背景に存在します。
もし、あなたの子どもに問題現象が見られるのであれば、将来自己肯定感の低い大人になってしまうかもしれません。
そうならないためにも、早い時期から対処が必要になります。
一方で、問題現象に気づいていないパパ・ママの存在も少なからずあります。
「ウチの子は大丈夫!」
と思わず、一度じっくり観察することも良い機会かもしれません。
参考文献・図書・サイト
中島輝:自己肯定感が低い人に表れる危ない5つの特徴,東洋経済オンライン
井口均:自己肯定感を育てる保育,長崎大学教育部紀要教育科学vol.62
出野翔平:子どもの自己肯定感を促す教育-選択理論の援用の意義について-