子どもは、家庭での親・兄弟との関わりや保育園、幼稚園でのお友だちとの関わり、地域社会の中での大人との関わりなど、様々な人々との出会いや関わりの経験を積み重ねていきます。
しかし、近年では少子化や都市化によって就学前の子ども達が、多くの人と関わる機会が少なくなっています。
こうした現状の中で危ぶまれるのが、他人との関わり方が分からない子どもに育ってしまうことです。
文部科学省が出している幼稚園教育要領のなかに、
「幼児期の終わりまでに育って欲しい10の姿」という項目があります。
その中には、「共同性」「道徳性・規範意識の芽生え」という項目が含まれています。
この2つの項目は、幼児がお友達との関わりを通じて、
- 一緒に活動する楽しさや喜びの感情
- ケンカをすることで怒りや悔しさの感情
これら様々な感情を体験することで、
- 友だちは自分とは違った考えをもっていること
- その違いを受け入れること
を学び、一緒に過ごしていくために自分をコントロールできるようになることを期待して設定されています。
また、近年ではいじめによる自殺や不登校などの問題が報道されるのを目にします。
学校のいじめが問題となる時期にはボリュームゾーンがあって、多くの場合は小学校低学年~中学生の時期に多発する傾向にあります。
これは、この時期特有の仲間関係の発達に関係しています。
小学校低学年~中学生の時期というのは、仲間意識が強く同質性を強く求める傾向にあります。
すなわち、気の合う仲間のみで集まり、他者は除外する傾向が強い集団となった結果、いじめや不登校などの問題が生じると考えられています。
もちろん、思春期の児童として正常な発達の過程ではありますが、行きすぎるのは問題です。
行きすぎた問題行動はいじめや不登校に繋がりかねません。
そこで大切なのが、「幼児期からの他者の多様性への寛容さ」を子どもに教えるということです。
小さい頃に他人を許容できる範囲を広げておけば、過度な排他的思考には陥りません。
そこで、先ほどもご紹介した「幼児期の終わりまでに育って欲しい10の姿」のうちの「共同性」「道徳性・規範意識の芽生え」を子ども達に培うことが求められています。
「友だち関係」に関連したオススメ絵本
2017年に幼稚園・保育園の先生を養成する短期大学の学生317人を対象にしたアンケート調査があります。
そのアンケートの中で、
- 子どもたちに身近な人間関係について考えさせたい。
- 人の気持ちに配慮することの大切さを伝えたい。
読み聞かせしたい絵本とその選書理由をご紹介します。
アンケート結果 上位7選
アンケートでは、上位7作品が「最も読み聞かせしたい絵本」と複数回答された作品です。
1位:そらまめくんのベッド
2位:くれよんのくろくん
3位:ともだちや
4位:いつだって ともだち
5位:きつねのがっこう
6位:ぐるんぱのようちえん
7位:ごめんねともだち
1位:そらまめくんのベッド
著者:なかやみわ
対象年齢:3~4歳
そらまめくんの宝物は、雲のようにふわふわで、綿のように柔らかいベッド。
だから誰にも貸してあげません。
ある日、その大事なベッドが突然無くなってしまったからさあ大変!
そらまめくんは必死でベッドを探しますが、どこにもありません!
ところが、やっと見つけたベッドには、ウズラが卵を産んで暖めていたのです。
さて、そらまめくんは…
福音書店HPより一部改編
人は、人に優しくすることで身体関係が生まれるので、人に優しく接すると自分にも優しさが返ってくることを伝えたい。
自分のお気に入りのものがあっても、独り占めしないで皆で一緒に使えばもっと楽しくなるという譲り合いや協調性の大切さを伝えたい。
2位:くれよんのくろくん
著者:なかやみわ
対象年齢:3歳~
ある日、箱から飛び出したクレヨンたち。
次から次へと楽しい絵を描いていきますが、くろ君だけ出番がありません。
しかし、シャープペンのお兄さんと共に素晴らしい活躍をすることに…
「book」データベースより一部改編
皆の持っている色々な個性を発揮してほしい。
くろくんの様に、短所を長所に変えた上で、皆の個性を活かして作り上げる協調性や団結力の大切さを伝え、仲間はずれやいじめをしない子どもになってほしい。
どんな子でも、皆自分とは違う性格で、良いところも悪いところもある。
でも、だからこそくれよん達の様に、誰も見捨てずに仲良くして欲しい。
3位:ともだちや
著者:内田麟太郎、降矢なな
対象年齢:3・4歳
「友達屋」を始めることを思い付いた寂しがり屋のキツネ。
1時間100円で友達になってあげようというものだ。
でも、その商売もなかなか上手くいかない。
そんな時「トランプの相手をしろ」と声を掛けてきたのはオオカミ。
トランプの後にキツネがお代を請求すると、オオカミは目を尖らせた。
「お、お前は、友だちから金を取るのか。それが本当の友だちか」…
偕成社HPより一部改編
大人が子どもに対して「友だちを大切にしよう」なんて言っても、説教臭くなってしまいがちですが、この本は、自然と友だちの大切さを教えてくれる。
4位:いつだってともだち
著者:内田麟太郎、降矢なな
対象年齢:3歳~/全32ページ
3位の「ともだちや」から始まった「おれたち、ともだち!」シリーズの12作目の作品です。
近頃とっても変なオオカミさん。
キツネは遊びたいのに、オオカミさんは居眠りばかり。
クマさんもイノシシさんもヘビさんも、遊ぼって言っても皆ダメって言う。
キツネはひとりぼっちになった気分。
でも、オオカミさんが考えていたことは、とびきり素敵なことでした。
だって、大切な友だち、キツネの誕生日だったのですから!
「Amazon内容紹介」より一部改編
2人の親友だけでなく、周りを巻き込んで「みんな友だち」と友だちの輪を広げることの大切さを教えてくれる作品です。
5位:きつねのがっこう
著者:いもとようこ
全36ページ
ある日、大切なものを落として、きつねの学校にやってきた人間の男の子。
その学校で学んだことは…?
スマホと人間の関わりについて取り上げている内容です。
「Amazon内容紹介」より一部改編
きつねの学校で、先生のお話の素晴らしいこと!きつねの生徒達が自分の意見を言うシーンが印象的でした。
「自分で考えること」の大切さを教えてくれる作品です。
6位:ぐるんぱのようちえん
著者:西田ミナミ、堀内誠一
対象年齢:4歳~
ぐるんぱぱは、独りぼっちの大きなゾウです。
ビスケット屋さん、靴屋さん、ピアノ工場、自動車工場…
ぐるんぱは、色々な仕事場で一生懸命に働きますが、作るものが大き過ぎて失敗ばかり。
そんな時ぐるんぱは、子どもが沢山いるお母さんに出会います。
子どもたちの世話を頼まれたぐるんぱは、とても素敵なものを作ります。
それは、ぐるんぱが作った大きな物で沢山の子どもたちが遊べる、素敵な幼稚園でした。
福音館書店HPより一部改編
この作品の本質は「自分探し」です。
主人公のぐるんぱは、自分では何も出来ない、行動しない。
仲間に背中を押されて少しずつ成長していく物語です。
自分のお友だちにも優しく応援できる姿勢を学んで欲しい。
7位:ごめんねともだち
著者:内田麟太郎、降矢なな
対象年齢:3・4歳~
3位、4位にランクインした「おれたち、ともだち!」シリーズが7位にもランクインしています。
オオカミはキツネと初めての大喧嘩。
仲直りしたいのに、あの一言が出てきません。
「ごめんね」って。
心の中なら言えるのに。
「Amazon内容紹介」より一部改編
お友だちとの付き合いの中で必ず生じる衝突や葛藤、仲直りまでを描いた作品です。
喧嘩しても、また仲良しになれる絆を築いて欲しいので選びました。
今回のランキングは、
- 友だちへの優しさ
- 譲り合い
- 思いやり
- 相手を思いやることで、自分が嬉しくなる
これらの要素が多い作品がランクインしました。
その背景には、子どもに互いを思いやることの大切さを感じ取って欲しいという思いが感じられました。
「友だちを大切にすること」を教える人気絵本ランキングTOP7まとめ
近年教育の現場で問題となっている、いじめや不登校などに対して幼児期からの友だちに対する姿勢の教育が重要視されてきています。
幼児期の子ども達が絵本の世界に入り込み、主人公に同一視し友だち同士の葛藤場面を疑似体験する中で、「共同性」や「道徳性」、「規範意識の芽生え」について深く考え、「互恵性」や「他者の多様性への寛容」という観点を自身の内に育てていくことが重要です。
今回ご紹介した作品は、どれも子ども達に互恵性や多様性への寛容さを育む絵本です。
もし、「どの絵本を読み聞かせしようか」迷った時は、是非これらの作品を手に取ってみてください。
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