子育ては楽しいと思える反面、ほとんどの親がストレスと感じる場面に出会います。
育児ストレスと聞くと、主に母親のストレスを思い浮かべますが、父親だって育児ストレスは溜まります。
特に現代の父親は育児と仕事の両立が上手くできずストレスを溜めこむことが問題です。
仕事に加え、家事・育児の協力を精一杯やっているのにも関わらず、母親に理解されずに仕事と育児の板挟みによって神経をすり減らしているという傾向が指摘されています。
今回は父親特有の育児ストレスについてご紹介します。
内容は父親向けですが、母親にとっても夫の理解に繋がる内容ですので、ぜひ最後までお読み頂ければと思います。
乳幼児の育児ストレス-結論
父親の育児ストレスは9種類あり、特に「子どもの自己本位な特性」「育児への自信のなさ」の項目がストレスを感じやすい。
情動反応の特徴としては、「不安・恐怖・心配」が多く、「怒り・イライラ」と2分される結果に。
育児ストレスとは?
育児ストレスとは、子どもの育児環境によって受けるストレスのことを指しています。
育児ストレスは、子どもの育児に伴って生まれるストレスで、特に母親の育児ストレスがよく取り上げられますが、両親それぞれが経験するものです。
この育児ストレスは父親・母親で特徴が異なりますが、多くは孤独感や不安、イライラなどのを感じやすくなるのが特徴で、結果として夫婦関係が悪化したり、精神的な不調に繋がる、最悪の場合には子どもの虐待の原因となってしまうこともあります。
父親の育児ストレス項目別内容
父親の育児ストレスカテゴリーは9項目に分類されます。
育児ストレス項目 | 件数 | 記述内容 |
①子どもの自己本位な特性 | 75 | いうことを聞かない、ワガママ過ぎる、イタズラをする、泣く、騒ぐ、 散らかす、思い通りに行動しない、子どもに無視されたとき、 可愛がっているのに「ママのほうが好き」と言われたとき など |
②子どもの成長への気がかり | 42 | 病気、友だちと上手に遊べるか、子どもの安全、容姿、 子どもの性格や健康、能力にたいするもの など |
③育児への自信のなさ | 30 | 育て方に自信がもてない、これでいいのか、価値観を押しつけていないか、 子どもの気持ちを理解できているか、しつけが上手くできていない、 虐待をしているのではないかと感じるとき など |
④自分に対して | 28 | 子どもと遊んでいて疲れる、子どもと接する時間が少ない、 家族のために仕事だけするのが虚しい、自分の事を先行しがち、 子どもに対して相応しくない言動があったとき など |
⑤混沌とする社会事情 | 21 | いつ不可解な事件に巻き込まれるかもしれない、少年犯罪やいじめ、 学校や地域や社会での事件や出来事などが多い、IT産業に子どもが 巻き込まれ自然とどのように対応できればあよいか理解できるか など |
⑥育児環境の不備 | 15 | 母親がみているのでこのままでよいか、交通の問題、学力の低下の問題、 父親が子どもの学校行事に参加できるような国の保証が欲しい、 遊ばせる環境が少ない、保育の受け入れる定数が少ない、 児童手当が貰えない、競争心が薄れている など |
⑦困難な仕事との両立 | 14 | 仕事で疲れているのに、子どもの面倒をみなければならない、 休日も朝から遅くまで面倒をみなければならない、 自分が疲れている時に子どもがまとわりつくとき など |
⑧妻との関係 | 13 | 妻が子どもにあたる、妻の体力が心配、 手伝ってやりたくても出来ない、子どもに甘い、 一生懸命やっているつもりが認められない など |
⑨自分の行動への干渉 | 4 | 自分のやりたいことができない、自分の思い通りにならない、 自分の時間が何も無いことを感じたとき など |
「子どもの自己本位な特性」
子どもの自己本位な特性とは、子どもが本来もっている特性です。
人間として社会生活に適応する前の動物的、本能的な部分に対してストレスを感じてしまいます。
- 言うことを聞かない
- わがまま過ぎる
- 泣く、騒ぐ、散らかす
→怒り・不満・疲れ
子ども特有の特性に起因した怒りや疲れが挙げられています。
「子どもの成長への気がかり」
子どもの成長を気にするということは、裏を返せば無事に成長して欲しいという愛情と心配からくるストレスです。
- 病気、安全
- 性格や容姿、能力
- 友だち関係
→心配・不安・恐怖・イライラ
子どもの将来を案して考えたり悩むことによって心配し過ぎたり、不安になってイライラしてしまうことが挙げられています。
育児への自信のなさ
育児への自身のなさとは、父親自身がもっている理想の父親象とのギャップからくるストレスです。
自分は本当に父親としてうまくできているのか、周りと比較した結果、自分への不安感から生じます。
- 育て方に自身がもてない
- 子どもを理解できているか
- 自分の言うことを子どもが理解できているか
→もどかしさ、心配、不安
母親は上手くできているのに、自分では上手にできないことの積み重ねによってもどかしい思いをしたり、教育のつもりが虐待になっているかもしれないという心配・不安感から生じるストレスを感じてしまいます。
自分に対して
自分の肉体的な衰えや育児時間の確保など、どうにもならない部分や育児に対する甘えの姿勢からくるストレスです。
- 子どもと接する時間がとれない
- 子どもと遊んでいて体力がもたない
- 家族のためだけに働いていると感じる
- 家族より自分の時間を優先してしまっている
→虚しさ、悲しみ、不満、怒り、イライラ
上手に父親として振る舞えないことから、自分に対して虚しさや悲しみ、不満、さらに子どもに対して相応しくない言動をとってしまった時や接する上で大人と子どものギャップに対して怒りやイライラを感じます。
混沌とする社会事情
事故・事件に子どもが巻き込まれるんじゃないかという社会事情に対して不安を持つことで生じるストレスです。
- 不可解な事件に巻き込まれないか
- 少年犯罪、いじめ問題に発展しないか
→不安、恐怖
学校や地域社会で起こる事件に対する不安や恐怖の情動にストレスを感じてしまいます。
また、近年目覚ましい発展を遂げているIT産業時代に対する我が子の育ちへの心配も、このご時世ならではの心配事です。
育児環境の不備
育児環境の不備とは、通園・通学の際の道路の整備状況や、近くで子どもを遊ばせるのに適した公園が無い、遊具が少ないなどの環境に対して不満を持つことで生じるストレスです。
また、父親の育児に参加するために障害となる仕事の拘束時間や保育園に入れないなどのいわゆる待機児童問題もここに含まれます。
- 交通事故に遭わないか
- 仕事で学校行事に参加できないかも
- 保育園に入れない
- 児童手当無くなったんだけど!?
→心配、不満
父親の個人的なファクターに関するものや、行政に関して不満をもつことでストレスを感じています。
また近年は保育園や幼稚園で「かけっこなどで順位をつけない」などの教育方針の転換によって、競争心が薄れていることへの心配や不満などもここに含まれます。
困難な仕事との両立
仕事と育児の狭間で板挟みになっている父親特有のストレスです。
- 仕事で疲れているのに子どもと遊ばなければならない
- 休日も朝早くから夜遅くまで子どもの世話をしなければならない
→面倒くさい、疲労
平日は仕事でくたくたになっているのにも関わらず、休日も子どもの面倒を見なければならないなどで疲れに関する気持ちが生じます。
妻との関係
育児に関して妻との意見の相違や身体的(時間・体力的)なことで生じるストレスです。
- 妻が子どもに当たる
- 妻が子どもに甘い
- 妻の体力が心配
自分は仕事に育児に一生懸命やっているのに、妻からは一向に評価されない。逆に家事・育児に関して不満を言われる、なんてことでストレスを感じます。
父親の育児ストレス
父親のストレスの傾向としては「かわいがっているのに母親のほうが好き」とか、「パパ嫌い!」と言われたときに最もストレスを感じる傾向にあります。
これは、母親の立場では非常に少ないケースで、子どもの自分に対する愛着や愛情についての受け止めが悲しみや虚しさなどのストレスにつながっています。
父親の育児ストレスの内容は、
- 母親と共通している要因
- 父親だけがもつ要因
この2つに分けられます。
父親独自のストレス
母親に見られない項目に着目すると、自分の事を最優先にしがちだったり、子どもと接して疲れるなどの「自分に対して」が挙げられます。
さらに、母親に対しては妻の育児に対する姿勢などの育児方針や妻自身の体力面への心配があります。
また母親のストレスでは父親に対する不満の内容が聞かれますが、父親では逆にやっても認められないことに対する不満や虚しさを抱いている傾向が父親独自のストレスとなっています。
母親と共通の育児ストレス
父親・母親に共通する育児ストレスは、「育児への自身のなさ」です。
不慣れな子育てで、育て方はこれで大丈夫か、思いを子どもに上手く伝えられるかなど子どもとの関わりでの悩みがあります。
特に「虐待にあたるんじゃないか」と自分のしつけ方に疑問を持った時に大きなストレスを感じるのは共通した育児ストレスです。
その他には、「混沌とする社会事情」や「育児環境の不備」にはストレスを感じる傾向です。
乳幼児の子育てパパに聞いた!父親の育児ストレスの特徴とは。まとめ
父親が育児をすることでストレスとして感じる感情は、「不安・恐怖・心配」の項目が最も多く、ついで「怒り・イライラ」の二分されます。
父親の子育てのポジションは、母親をサポートしながら子どもの成長や発達をとらえて接します。
つまり、母親より客観的に子どもの成長を見る立場ゆえに心配や不安を中心としたストレスを感じる傾向にあります。
自分の育児ストレスの原因はどこからくるのか、またはどの場面のストレスが一番感じやすいのか、ストレスの出所を客観視することであらかじめ避けるように行動したり、理解・納得することで受けるストレスを軽減することができます。
育児をする上で、完全にストレスから解放されるということはありませんが、上手くコントロールして付き合う術を身につけることは大切です。
それが円満な家庭、良好な関係を築くことにつながります。
まずは、自分のストレスの原因がどこから来ているのか考え直すきっかけになれば幸いです。
参考図書・文献・サイト
清水嘉子:父親の育児ストレスの実態に関する研究,小児保健研究第65巻第1号(2006)