子どもがテレビやスマホで動画を見ることの弊害としていくつかのことが言われています。
映像と現実の区別がつかなくなるんじゃない?
長い時間見せると頭が悪くなりそう…
こんな、テレビにまつわるウワサを耳にしたことがあるかもしれません。
でも、実際のところはどうか?
テレビやスマホの「何が」悪いのか。
具体的なことを知らないパパ・ママも居たりします。(自分も分かりませんでした…)
実際にメリット・デメリットそれぞれどんなものがあるのでしょうか。
ということで、調べてみました!
赤ちゃんは生まれた後、色々な影響を受けて急速に発達していきます。
その発達に必要なのは、「おもちゃ」と「遊び」です。
色々な研究によって初期の発達には、この2つの要素が大きく影響することが分かっています。
オモチャについては、最初はガラガラではじまり、お座りの時期、ハイハイの時期、あんよの時期など、赤ちゃんの身体的発達に伴って興味をもつオモチャも変化します。
そして、オモチャを通して赤ちゃんも発達していきます。
さらに、遊びも子どもの発達に必要です。
手あそびから始まり、お歌、砂場あそび、かけっこ、ボール遊びなど。
これらの遊びが刺激となって、脳や体を発達させます。
赤ちゃんは「指先の器用さ、全身の筋力アップ、考える力など」すべてオモチャや遊びから学びます。
ところが、近年は赤ちゃんの発達の中にテレビ・スマホという文化が入ってきました。
パパ・ママがちょっと忙しいときにYoutubeを見せてしまっている方を見かけます。
この行為は、赤ちゃんの成長・発達にどのような影響を与えるのでしょうか。
そこで、今回はテレビやスマホなどのデジタル機器を通したメディアが赤ちゃんの発達について、どのような影響を及ぼすのかについてご紹介します。
結論:デメリットが多い!
先に結論から言うと、デメリットの方が多い結果になりました。
テレビ・スマホが赤ちゃんに与える影響は無視できない!
メリット
・集中して見てくれるので手が掛からなくなる。
・コンテンツ内容によっては生活習慣の学習ができる。
デメリット
・身体的影響(けいれん、映像酔い、眼精疲労、調節障害、筋力・持久力の発達が未熟、肥満、表情が少なくなる)
・精神的影響(意思の表現が未熟、言葉の発達が遅れる)
・その他影響(家族のコミュニケーション不足、社会的関係が作れない)
メリット・デメリットだけを見ると「親が楽すると、子どもに悪影響を及ぼす」ように見えてしまいます。
ただ、全てを排除するということは実際には難しいと思いますし、使い方によっては有益にもなります。
要は「正しく使うことが大切だ」との結論です。
テレビに対する医学的な見解
実際に医学的に見て、テレビは良いか悪いかについて調べてみました。
米国小児科学会によると、
・人生の最初の2年間は、子どもの脳の発達と成長に、とりわけ重要な時期である
・この期間に、子どもは、他の子どもや大人との積極的な関わり合いを必要とする
・テレビの見過ぎは、初期の脳の発達に、ネガティブな影響を与える
・当学会は、2歳以下の子どものテレビ視聴は勧めない
としています。
幻冬舎ゴールドオンライン 子どもにテレビやスマホを見せてよい時間はどれくらいか
米国小児科学会は、テレビに対して否定的な立場をとっています。
日本小児学会の提言
1.2歳児以下の子どもには、テレビ・ビデオを長時間見せないようにしましょう。
内容や見方によらず,長時間視聴児は言語発達が遅れる危険性が高まります。
2.テレビはつけっぱなしにせず、見たら消しましょう。
3.乳幼児にテレビ・ビデオを一人で見せないようにしましょう。見せるときは親も一緒に歌ったり、子どもの問いかけに応えることが大切です。
4.授乳中や食事中はテレビをつけないようにしましょう。
5.乳幼児にもテレビの適切な使い方を身につけさせましょう。見おわったら消すこと。ビデオは続けて反復視聴しないこと。
6.子ども部屋にはテレビ・ビデオを置かないようにしましょう。
日本小児学会こどもの生活環境改善委員会 乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です
日本小児学会も基本スタンスはアメリカと同じようです。
どちらも2歳を目安に注意を促しています。
ただ、日本の場合は「長時間」見るのを避けましょう。というニュアンスでした。
やっぱりテレビは悪影響なのか…
テレビが子どもに及ぼす影響
次に、実際にテレビを見ることで子どもにどのような影響を与えるのか。
テレビ側の要因について調べてみました。
テレビ側の要因
1.視野が固定される
2.距離をもつ一方的刺激
3.二次元刺激
4.発光と点滅する刺激
5.動画刺激(揺れ・縮小・拡大・回転)
6.聴覚より視覚に強い刺激
7.映像内容
乳幼児の発達とメディア~小児神経学の立場から~一部改変
これらの事は、テレビ・スマホのどちらにも言えることです。
これだけ多くの因子がありますので、当然子どもにとって様々な影響を与えます。
テレビの副作用
テレビ側の7つの要因によって考えられるのが「副作用」です。
けいれん発作(光誘発性けいれん)
点滅映像が原因でおこるけいれん発作です。
光の点滅刺激によって、脳波異常が誘発されてけいれん発作が生じます。
1997年のアニメ「ポケットモンスター」のけいれん発作は当時社会問題になりました。
映像酔い
めまい・吐き気などの症状をはじめ、なんとなく酔った気持ちになったり、ふらふらして気持ち悪くなる。
動いている映像が原因で生じやすくなります。
ホームビデオなど、素人が撮った手ブレの多い動画などで生じます。
また近年では地震の時にテレビで放送局の事務所が揺れる映像を流していますが、これも映像酔いの原因にもなります。
眼精疲労
長時間映像を見続けることで、目が疲れたり、痛くなったりする。
目の筋肉は非常に繊細にできています。
視線を移動させたり、固定したり、瞳孔の開閉など複雑な動きを筋肉によって調整しています。
子供の場合は、筋肉の発達が未熟なため、無理をして画面を見ている場合があります。
調節障害
立体映像(3D映像)による目のピント調節が困難になる。
ジェームズキャメロン監督の3D映画「アバター」を見て頭痛を起こす人が出て「アバター頭痛」なんて言葉も聞かれました。
これは、目の疲労による調節障害からくるものです。
3D映画は左右の違った映像を頭の中で処理して立体的に見ています。
立体的に見るということは、目の筋肉を上手に使わなければいけませんし、逆に言うと「無理」をして見ています。
特に目の筋肉が未発達な子どもは注意しなければいけません。
無理をして見ようとして一時的に斜視を起こしたり、眼精疲労を起こしやすいと注意喚起されている程です。
無表情で動画やテレビを見ている
テレビを見ている時とオモチャで遊んである時の表情の差は歴然です。
子どもがテレビを集中して見ている時の様子は無表情に近く、体も動かしません。
まばたきも少なく、まぶたが垂れています。口もポカンとしていて全体的に表情筋が働いていません。
一方でオモチャで遊んでいる時の様子は、表情豊かで体を良く動かしています。
まばたきが多いし、目はしっかり開いて快活な印象です。
子どもの成長発達への影響
テレビを良く見る子どもと、あまり見ない子どもの発達について検討した研究があります。
テレビをあまり見ないグループ(青いグラフ)では、各要素が平均的な数値になっています。
一方で、テレビを長時間(5時間以上)見るグループでは社会、生活、言語の要素が低めになっています。
また発育の通過項目で見た時には、動物の見分けなどの視覚系は比較的優れています。
その一方で、文の記憶や指示の理解など、聴覚系の発達がどうも良くないというのが分かっています。
テレビやスマホが子どもに与える影響まとめ
テレビやスマホなどの普及によって、私たちは映像を見る機会が格段に増えました。
実際に、テレビの影響で赤ちゃんの発達に一番影響するのは「言葉の遅れ」かもしれません。
毎日長い時間テレビを見るということは、言葉による情報が少なくなると同時に、家族とのコミュニケーションも少なくなってしまいます。
以前ご紹介した「赤ちゃんの心を豊かに育てる方法」では、なにより家族との笑顔でのコミュニケーションが必要であるとお伝えしました。
もしかしたら、目に見える発達のみならず将来大きくならないと見えない部分への悪影響も考えなければならないのかもしれません。
しかし、実際には子どもにテレビやスマホを見せていないと家事などが進まないこともあると思います。
結局のところ、子どもとテレビとのつきあい方というものは、1かゼロでは解決しない問題だと思います。
ずっと見させるのではなく、見る時間を分配したり、見せる内容を厳選して見る時の質を上げることでうまく付き合っていくのが正解かもしれません。