オノマトペとは
聞き慣れない言葉ですが、オノマトペ(onomatopee)とは、擬態語・擬声語・擬音語・擬情語の総称で、もともとはフランス語が由来です。
これらの言葉は、実際の音ではなく、実際の音を模したり、状態を直感的に把握したりして象徴化した言語です。
例えば、擬音語は音を描写した言葉で、「ゴクゴク(水を飲む音)」などがこれにあたります。
擬態語は実際の音は無いが、状態や動作などを表現した言葉で「キョロキョロ(周りを見回す動作)」や「シーン(静かな状態)」なそがあります。
ちなみに、日本を代表する絵本作家の谷川俊太郎さんは、オノマトペにことを「おとまねことば」「ありさまことば」 と表現しています。
子どもはオノマトペを良く使います。例えば、「ブーブー(車)」「ぽっぽ(ハト)」など、名詞で使われることが多いのが特徴です。
そんなこともあってか、赤ちゃん言葉のイメージを持たれている方も少なくありません。
「赤ちゃん言葉」で片付けるのはもったいない!
実はオノマトペは私たちが思っている以上に便利な言葉です。
ただ、日常生活に馴染み過ぎているが故に、あまり注目されることはありません。
例えば、雨が降っている状態を誰かに伝えようとした場合、オノマトペを使うことで細かい情景などのニュアンスを伝えることができます。
弱い雨が降っている場合は、雨が「シトシト」と降っている。
強い雨の場合は、雨が「ザーザー」と降っている。
このように、オノマトペを使用することで、長々と説明する必要がなく簡潔に伝えることができる上に、聞き手側もどのような状態なのかイメージがしやすくなるというメリットがあります。
つまり、子どもが使いやすく、大人にも細かく情報の共有が出来る言葉、それがオノマトペなんです。
子どもとオノマトペ
「2・3歳児の言葉は単語や短いフレーズを一言で言い切るという特徴があり、話し言葉全てがリズミカルに聞こえるという傾向があった。子どもたちはその場の気分を短い言葉で表現し、それを繰り返すことによって拍節的な時間単位を作り出す。同時に呼吸を整えるという音楽的表現のための基礎的なルールを毎日の生活の中で着実に学習し楽しんでいた。そしてリズミカルな言葉のほとんどが動作を伴っていたことは言葉の発声が動きを組織づける証明となる。
藤田笑美子「保育園2歳児クラスで観察された話し言葉と歌の中間形式」日本保育学会第43回大会研究論文集(1990)より
子どもにオノマトペを教える最大のメリットは、身体表現が豊かになることです。
オノマトペはその強い表現力から単語だけでも説明できるという特徴があります。
言葉のつたない子どもは、ひと言ふた言で会話をします。
オノマトペを使った短いフレーズを一言で言い切ることで、話し言葉が全てリズミカルになります。
リズミカルに発せられた表現は音楽的であり、同時に身体表現としても表れる。
つまり、オノマトペを学ばせることは子どもの身体表現を豊かにするということです。
絵本とオノマトペ
子どもにオノマトペを学んで、身体表現が豊かになるために有効なのが「絵本」です。
最も動きを引き出しやすいのはオノマトペ絵本である。
古市久子「こどもの動きを引き出すオノマトペ絵本」より
絵本は子どもが文字と初めて出会う場です。
子どもは大人から絵本の読み聞かせをしてもらう中で文字を覚え、表現を覚えます。
表現を豊かにするオノマトペと、言葉を覚える絵本。
この2つは凄く相性が良く、最も効率的に子どもの表現力を成長させるのがオノマトペ絵本なんです。
子どもの表現力を豊かにする
楽しさが動きを引き出すオノマトペ絵本
オノマトペの魅力は、声に出したときの楽しさです。
目で見る大きな絵と、それを膨らませるオノマトペはこどもへの読み聞かせに最適です。
リズミカルな調子のオノマトペは、子どもの耳に残りやすく、すぐに覚えて使うようになります。
さらに、お友達にも伝えて仲間うちでどんどん使うようになります。
これが子ども達が絵本で出会ったオノマトペと身体表現に発展するプロセスです。
楽しさが動きを引き出すオノマトペ絵本の代表作はカニ ツンツン (こどものとも傑作集)です。
子どもが大好きな絵本である「カニツンツン」には以下の添え書きがあります。
「生きているから子どもは笑う
生きているだけで子どもは喜ぶ
子どもに教える絵本じゃありません
子どもに教わる絵本です。
わけがわからないが、声に出してみると、おもしろい。
何かわかりそうでわからないが、
そのうちそんなことどうでもよくなってくる」
作者の川谷俊太郎さんの言葉です。
子育てをしていると、日常子どもはこんなことで喜ぶんだ、と感じることがありますが、
本作品に対する子どもの反応はまさしくこれだと感じます。
種々な民族の言葉と、ご自分の創作の言葉をコラージュふうに並べた形でできた日本語を超えたことばあそびに、楽しい色彩が踊る、ユニークな絵本です。4年前に月刊絵本「こどものとも」の一冊として刊行された時に、「わけのわからない」という大人たちの戸惑いを尻目に、子どもたちに爆発的に受け入れられました。子どもたちはことばの多彩な響きを楽しみとなえ、笑いながら、ころげながら、この絵本を自分たちの宝物にしていったのです。
福音館書店HPより
相似形のオノマトペは身体表現を確実にする
ここでのオススメのオノマトペ絵本はやぎのブッキラボー 3きょうだい (世界の絵本コレクション)です。
この作品では大中小の大きさの違うヤギが登場します。
この3頭のヤギが橋を渡るだけのストーリー構成となっていますが、それぞれのヤギが橋を渡る時の音をオノマトペで表現しています。
「キイ、ギイ、キイ、ギイ」
「キーイ、ギーイ、キーイ、ギーイ」
「キキーイ、ギギーイ、キキーイ、ギギーイ」
どれが小さいヤギのものか。
それとも大きいヤギのものか。
これだけでも十分にヤギが橋を渡るイメージがつかめます。
オノマトペには多くの言葉を必要とせず、情景を映し出す力があります。
オノマトペは変化するものを分かりやすく表現することが容易にできます。
そのことが、身体表現を容易にし、表現したい気持ちを高める効果が期待できます。
やぎのブッキラボー 3きょうだい (世界の絵本コレクション)は大きさの違いを表現した作品ですが、大きさの違いをオノマトペに落とし込んだ作品はいくつもあります。
例えば、ヒュンヒュン ビュンビュン ビュワンビュワンでは女の子の大きさにつれてだんだん大きくなっていく工夫がされています。
ごろりんごろんころろろろ (ひさかた絵本傑作集)では重い荷物を後ろから押してくれる動物が増えるたびに音が変わっていって、引っ張る力が少しで済むようになったことが分かります。
このように、オノマトペが少し変化するだけで、状況の変化が分かるオノマトペ絵本は身体表現を豊かにする可能性を秘めています。
言葉と意味を瞬間的に理解し、表現を容易にする
オノマトペは子どもたちに喜ばれ使われることで、言葉が記憶され、その言葉にまつわる状況も同時に記憶されていきます。
これは、親、兄弟、友だちや周りの大人たちから知らず知らずのうちに受け継がれることもあります。
その一方で、マイナーな存在ゆえに、現在でも聞き慣れないオノマトペも少なくありません。
(マイナーだからといって、不要なものはありません。中には子ども達に素晴らしい影響をもたらすものも存在します。)
ぽぱーぺ ぽぴぱっぷ (谷川俊太郎さんの「あかちゃんから絵本」)
これらのオノマトペ絵本は、現代であるからこそオノマトペとして表現され、受け入れられている代表的なものです。
グローバル社会が進んでいる現代では、代表的なオノマトペのみに拘らず、もっと自由で豊かな表現のあるオノマトペを積極的に取り入れて、表現力を高めるのも可能性を広げるという視点では大切なことです。
そんな受容的な意識を育むためにも、このような聞き慣れないオノマトペを取り入れてみるのも方法としては大変有効です。
イメージできると身体表現につながる
身体表現はイメージが出来ると表現しやすくなります。
そこで一役買うのが「イメージを広げる」オノマトペです。
例えば、電車の音を使った絵本は、その音だけで次々とイメージを広げることができます。
オススメの絵本は、この電車の音を使ったオノマトペ絵本がたたん たん (ひさかた絵本ランド)です。
内容はとしては、作品中にほとんど文章がなく、全部がたたん、がたたんと話が進んでいきます。
つまり、電車の振動をオノマトペとして表現しており、それをBGMとして使用している作品です。
動きを引き出す
オノマトペはどれも動きを引き出すものですが、もこ もこもこ (ぽっぽライブラリ みるみる絵本)は特にその性質が強い作品です。
このオノマトペ絵本を読み聞かせた子ども達は、自然ともこもこと体を動かし始めます。
途中、風船が「パチン」と割れるシーンがありますが、そこでは子ども達がパチンと大きく手を叩く動作が見られます。
例え初回の読み聞かせの時に身体表現が見られなかったとしても、再度読み聞かせる時は最初から体を動かす仕草が見られることでしょう。
理由としては、「身体表現の道」が関係しています。
身体表現の道とは、子どもが身体表現ができるようになるためのプロセスのことです。
身体表現は最初の手足を動かすことが出来るか否かによって変わってきます。
動きまでにスムーズに誘導することによって、そこから自分で想像してイメージを発展させていくことへの動機付けになります。
これが身体表現の道です。
そして、身体表現が出来るようになるかどうかには壁があります。
それが最初の手足を動かすことが出来るか否かです。
その壁を簡単に壊して身体表現に繋げることができるのがもこ もこもこ (ぽっぽライブラリ みるみる絵本)です。
もこもこもこを聞く小学校のこどもたちの様子について「この絵本には聞き手を触発する力があり、この力は大勢で読めば読むほど大きくなるように感じる。この絵本の力を受けた子どもたちの様子は、幼い子がぴょんぴょんと跳ねながら歩いたり、話をしたりする姿にどこか似ている。生命を感じる一冊。
絵本ガイドブックより
もう1冊動きを引き出す絵本をご紹介します。
それができるかな?―あたまからつまさきまでです。
この作品は、動物が「君はできるかな?」と動く部分を示しながら誘ってくれる絵本です。
人間が成長していく上で必要なのは体を動かすことです。
そして、子どもたちは誰よりも体を動かす楽しさを知っています。
この絵本を読み聞かせすることによって、動物のまねっこ遊びから、夢中になって体を動かすようになります。
最後に
オノマトペは子どもたちの動きを引き出す魔法の言葉です。
そして、オノマトペ絵本は身体表現を豊かにしてくれる魔法のツールです。
しかし、読み聞かせの時に読み手の工夫がなければ子どもたちに伝わりません。
読み手が絵本を読む時に強弱をつけたり、間をとったりと表情をつけることで、オノマトペ絵本の効果は何倍にも膨らみます。
ぜひ、子どもたちの読み聞かせる際は、そのことを留意してあげてください。
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